YouTuberのワタナベマホトさんに、催眠術師の南裕先生が催眠術をかけたこの企画。嫌いなピーマンは食べられるようになるのか?ポイントをふまえた上で、現役の催眠術師カイトが各現象を解説する。
その1:催眠術をかけて嫌いなピーマンが食べられるようになるのか?(準備編)
「嫌いなものが食べられる」現象は、感覚支配の「味覚変換」に相当する。(記憶支配に入る考え方もあるが、ここでは一般的な捉え方で解説する)
そもそも、生のピーマンはハードルが高い。催眠術をかける前に試食しているが、匂いやエグミが強く、苦手な人にとっては口に含むのも難しいだろう。
まず、周囲の2人に催眠術をかける。先に「好きなもの(イカの塩辛・砂肝)」を聞き出し、それをイメージさせてから暗示を入れている。「手に渡ったら、まず匂いを嗅いでください」と誘導し、嗅いだ瞬間に「いい香りです」と感嘆符を入れている。意識を向けた瞬間、こういう短い言葉が入りやすく、暗示として効力を発揮する。匂いを嗅がせて反応を見てから生のピーマンを食べてもらう。徐々にステップを踏ませながら、さらに反応を強化していくテクニックと並行して「うまいよ、すごいうまいよ」と言葉で追い込みを入れている。「新鮮、すごいみずみずしい」や「プレミアムの味になっている」と被験者から言葉を引き出し、声に出すことによって、さらに暗示を強化している。
その2:周囲のかかった様子を見て、いよいよマホトさんがピーマンに挑戦!(挑戦編)
かかった様子を先に見ることで、安心感を持たせ、さらに自分もかかってみたいという欲求を引き出している。これも催眠術の大事なテクニックである。「マホトさんって、何が好き?」と尋ね、「海鮮系ですね」と引き出した後、「海鮮には醤油ですね」と醤油を持ってきてもらう。より具体的にリアルにイメージさせ、思い込みを強化させるためである。
「あなたの嗅覚が完全に麻痺します。一番好きなのは何ですか?」「サーモン」「さあ、テーブルの上にあるサーモン手にとってください」「まず匂いがしなくなります」「あなたは今、サーモンを持っています」「サーモンにお醤油をつけて、パクっと食べちゃってください」そして食べた瞬間「ほら、おいしい。うまいでしょう」の一言が、さらに暗示を強化させている。そして2個目も間食。しっかりと暗示が入っている証拠である。
「催眠解ける」で解いた後、袋へダイブというお決まりのパターンだが、食べたという経験はしっかりと残っている(自分も覚えている)為、自身にとっては大きな自信につながる。「嗅覚がなくなる」でかけているので、匂いさえ克服できれば、ピーマンは食べられるわけだ。「独り占めしたい」と好きな感情をあおる追い込みは、さすがプロの催眠術師である。「これ、このままにしてもらっていいですか?」と被験者側から現象を手放したくない言葉が出てきたら、メリットを感じたガチの反応である。
その3:わさびが甘くなる
「わさびが甘くなる」も感覚支配の「味覚変換」に相当する。テレビでもよく見かける催眠術だが、実際はかけるまでの見極めが難しい。わさびはツンとした刺激があるため、確実に感覚支配が入り、かつ甘い別の食べ物の記憶を呼び出し、それにすり替えて味覚を変換させる必要がある。(記憶支配に入るという考えの所以はここにある)1本目の動画で「痛みを感じない・敏感になる」と「名前を忘れる」が入り、ピーマンとサーモンにすり替えが成功したので、この催眠術にトライ出来るわけである。(※かからなかった場合のリスクを考え、ご自身がトライする場合は慎重に行ってほしい。)
「甘い甘い生クリーム」と言いながら、丸々1本を絞り出す様子は圧巻である。催眠術師は被験者を気遣いながらも、常に攻めのキャラでないと務まらない。「何があっても絶対に大丈夫、動じない」からこそ、被験者は安心して楽しめるのだ。自信なさげに、弱い口調や態度では催眠術師として失格である。
「辛いものに対する感覚が全くなくなってしまいます」と暗示を入れてから挑戦。結果はむせてしまったが、それだけ難しい現象であることがよくわかる。記憶支配や他の現象と、この味覚変換はまた別格であり、これを知るだけでも催眠術師としてのレベルが向上する。
次回は3本目の動画について解説をお楽しみに。